[]コント「見知らぬビデオ」

コント「見知らぬビデオ」

◆男、目覚める。

二日酔いなのか目覚めが悪い

男、はっとした顔で急いで支度準備をすませる。

しかし再びハッとする。



男「……今日、日曜か」



◆落ち着いた男。



男「えー、昨日は……、飲んで、ズルズル梯子してぇ…、それでぇ…」



ふと枕元にあるDVDを見つける。



男「……え?。えーっと」



◆男思い出す。若干後悔。



男「……借りたか、これぇ」



◆男DVDを取りだす。



男「……五本も?。え、一泊二日? 今日じゃん」



◆男、しばらく沈黙。



男「……見るかあ」



◆男、DVDを観る。







一本目



男「……『さよなら、夏の日。』」



◆ビデオを見てみる。

 やってくるスーツ姿のおっさん二人。



おっさんA「(ダンディーに)頼む、トイレに行かせてくれ」

おっさんB「行かせてくださいだろ」

おっさんA「トイレに行かせて下さい」

おっさんB「もっと大きな声で」

おっさんA「トイレに行かせて下さいっ」

おっさんB「もっと大きな声でっ!」

おっさんA「トイレに行かせてくださいっ!」



◆映像を止める男。



男「…………」







二本目



◆別のビデオを見てみる。

 やってくるスーツ姿のおっさん二人。



おっさんA「(ダンディーに)頼む、トイレに行かせてくれ」

おっさんB「行かせてくださいだろ」

おっさんA「トイレに行かせて下さい」

おっさんB「もっと大きな声で」

おっさんA「トイレに行かせて下さいっ」

おっさんB「もっと大きな声でっ!」

おっさんA「トイレに行かせてくださいっ!」



◆映像を止める男。



男「……同じヤツ」







三本目



◆別のビデオを見てみる。

 やってくるスーツ姿のおっさん二人。



おっさんC「(ダンディーに)頼む、トイレに行かせてくれ」

おっさんB「(受話器を取る男)」

おっさんC「やめろっ、私の会社にだけはっ」

おっさんB「ほら、自分の会社の名前言え」

おっさんC「山中商事」

おっさんB「もっと大きな声で」

おっさんC「山中商事っ」

おっさんB「もっと大きな声でっ!」

おっさんC「山中商じぃぃっ!」



◆映像を止める男。



男「……『さよなら、夏の日。2』

……2」







四本目



◆気を取り直して四本目を観ようとする男。



◆上手にやってくるスーツ姿のおっさん三人。



おっさんB「(ダンディーに)頼む、トイレに行かせてくれ」

おっさんA「行かせてくださいだろ」



男「……なんか逆転した」



おっさんB「トイレに行かせて下さい」

おっさんC「もっと大きな声で」

おっさんB「トイレに行かせて下さいっ」

おっさんA「もっとっ!」

おっさんB「トイレに行かせてくださいっ!」

おっさんC「アグレッシブにっ」

おっさんB「トイレに行かせてください」

おっさんA「やまびこのようにっ」

おっさんB「トイレに行かせて下さいいいっ」

おっさんC「あの頃の自分へっ」

おっさんB「トイレに行かせてください…」

おっさんA「出会ったころのように」

おっさんB「トイレに行かせてください」

おっさんC「時には娼婦のようにっ」

おっさんB「トイレに行かせてくださいっ」

おっさんA「違うっ、『トイレに行かせてくださいっ』」

おっさんB「トイレに行かせてくださいっ」

おっさんC「違うっ、『トイレにいかせてくださいっ』」

おっさんB「トイレに行かせてくださいっ」

おっさんA「トイレに行かせてくださいっ」

おっさんC「トイレに行かせてくださいっ」

おっさんB「トイレに行かせてくださいっ」



男「……」







五本目



◆気を取り直して五本目を観ようとする男。



男「(しばらく映像を見る男)

……。

……。

……。

方陣グルグルだ」



◆暗転